2011年12月9日金曜日

アドリブ研究:altered scaleを使ったフレーズ by John Mclaughlin

僕がこれまで耳コピーをし、蓄えてきたアドリブフレーズを紹介します。
指使いやニュアンスなど演奏における注意点の他に、音使いのアナライズも解説しています。
アドリブのアイディアを広げる参考にしてください。












フレーズの概要 
John Mclaughlinがジャズバラッドの中で弾いているフレーズの一部から、2小節にわたる部分を引用しました。
altered scaleを元に作られているフレーズです。
リープ(大きなジャンプ)はなく、シーケンス的な繰り返しを含む音使いで、スタート音から徐々に下りの方向に向かっているフレーズです。
上手に使うととてもロマンチックに響くフレーズなので、ぜひ弾けるようになってくださいね。



指使いのこだわりポイント
Mclaughllinは独特な形のフレーズをよく演奏しますが、「Guitar Specific」という考え方でフレーズを作っています。
これはギターに特化したフレーズという意味で、フィンガーボード上におけるギター特有の音の配置を利用して作られます。
他の楽器では弾くのが難しくなる音使いでも、ギターでは理にかなった指使いで弾けるのです。
このフレーズでは細かいポジション移動を多用し、無理のない左手の動きで弾けるフィンガリングになっています。
ただそのためには左手の荷重移動で押弦するテクニックが必須です。
握力を極力使わず、スムーズなフィンガリングを目指してください。
(i :人差し指、m:中指、a:薬指、p:小指)

音使いのアナライズ
A7(#5)で使われているフレーズなので、Aをrootとしてアナライズします。
A altered scaleはA, Bb, C, Db, Eb, F, Gとなり、各音を度数で表すとR, b2, #2, 3, #4, #5, b7となります。
これを元にフレーズをアナライズすると以下のようになります。
・1小節目 #2, b2, R, #2, #5, #4, 3, #2
・2小節目 #4, 3, b2, R, #2, #5
altered scaleのb7度以外の全てのスケールノートが使われています。
altered scale特有の美味しい響きを持つb2と#2を多用しているのが分かりますね。
元々のコードトーンに#5度が使われているので、比較的コードにしっくりはまって聴こえる音使いになっています。
ただこのコードの次にくることが予想されるDm7の響きと比べると、かなり調性感が異なることが分かると思います。
A7(#5)-Dm7のコード進行上で実際に演奏して響きを確認してみてください。

補足として、altered scaleと同じ音の並びを持つlocrian b4でアナライズした場合はこうなります。
1小節目 b3, b2, R, b3, b6, b5, b4, b3
2小節目 b5, b4, b2, R, b3, b6
locrian b4はaeolianやphriygianなど他のモードとの共通音が多く、モーダルインターチェンジとして考えるときに有利なので、このアナライズもできるようにしておきたいですね。

演奏できるシチュエーションの考察
このフレーズはA7(#5)というドミナントセブンスコード上で使われています。
ジャズ特有のIIm7-V7-Imaj7のコード進行内では、V7のところで使えます。
次に続くコードが明るいmaj7なので、V7(緊張)→Imaj7(緩和)というダイナミックな響きの流れができます。
またマイナーキーのII-VであるIIm7b5-V7-Im7の箇所でも同様に使えます。
この場合は全体的に暗い響きのコード進行なので、マイナー感がより強調されます。
IIm7, IIIm7などImaj7以外のダイアトニックコードに進行するセカンダリードミナントの箇所でも同様に使えます。

演奏するときの注意点
細かいポジション移動が多いので、左手をリラックスさせて柔らかく使い演奏しましょう。
指先だけを動かして弾くとポジションの変化に対応できず、無理な指の動きになってしまいます。
左手の荷重移動を上手に使うと楽にポジション移動ができ、速く弾けるようにもなります。
Mclaughlin的フィンガリングの生理をこの機会に学んでください。
また1弦につき4音または2音ずつのかたまりになっているので、右手の自然な流れに逆らわないピッキングができます。
この点もスムーズな演奏をするために有利なポイントです。
両手のナチュラルで理にかなった動きを目指して練習してくださいね。

参考
Naima (from the album "after the rain") / John Mclaughlin ...official website