2012年2月27日月曜日

PatMethenyLabo:「James」アドリブ研究その3



Patが敬愛するアメリカのシンガーソングライター、James Taylorに捧げた曲「James」。優しいメロディラインはすぐに口ずさめるくらいポップでありながら、モーダルインターチェンジを駆使したコード進行がとても印象的です。Acousphereを始めた当初からの愛想曲ですが、いつも演奏しながら気持ちが癒されます。Patの作曲法の奥深さと、インプロビゼーションの巧みさを絶妙なバランスで聴くことができるアルバムバージョンから、アドリブソロを1フレーズごとコピーし分析していきたいと思います。Jamesのオリジナルアルバム・バージョンからのアドリブソロコピー、その3です。

<フレーズの説明>
・再生時間6秒
6弦7フレットから始まるフレーズです。このポジションだと6弦10フレットがルートになっていますが、ここから5弦5フレットがルートのポジションに移動します。次のフレーズへの流れを考えて、5弦7フレットを中指で押さえ、そのまま中指で5弦5フレットに移動します。

・再生時間7秒 (TAB譜11小節目から12小節目)
5弦5フレットのD音から始まるこのフレーズは、Patのメロディスなアドリブセンスが素晴らしい箇所です。速いコードの流れに沿って、絶妙な音使いをしています。フレーズの各音を各コードと対比して分析してみましょう。
 Dmaj7:root、3度
 Gmaj7:root、2度、3度
 C#m7b5:root、b2度、b3度
 Bm7:5度、5度、4度、b3度
一見D major scaleをただ上昇しているようですが、実は各コードトーン(特にルート音)をきっちり押さえたフレーズになっています。とても自然な流れに聞こえるのに、実は緻密に計算されていることが分かります。常にコードトーンを意識しながらアドリブをしているPatならではの音使いです。

・再生時間10秒
13小節目、1弦7フレットのB音はEm7の5度のコードトーンです。1弦9フレットのC#音に一度移動し、D/F#コードのタイミングで1弦5フレットのA音を弾いています。このA音はD/F#コードの5度のコードトーンです。次の2弦7フレットF#音と合わせて、ここでも確実にコードトーンを狙って演奏していることが分かります。次の14小節目も同様のアプローチで演奏されています。

・再生時間14秒
15小節目、Dコードのトライアドが弾かれています。2弦、3弦、4弦、の7フレットということで、ギタリストにとっては弾きずらいポジションですね。1弦2フレット、2弦3フレット、3弦2フレットの順で弾く選択肢もありますが、音色が籠り気味なのと、前のフレーズからの移動が少ないということでこのポジションを選びました。

<Technical Advice>
コードプレイヤーのアイディアを応用しよう
最後のDトライアドの箇所の指使いについてですが、3つの音を人差し指、中指、薬指というように別々の指で押さえています。これはシングルノートプレイヤーの演奏ではあまり見ないアイディアですね。普通異弦同フレットを弾く場合には、人差し指などを寝かせてまとめて押さえる方法をとると思います。しかしメロディラインをはっきり分離させて聞かせたいときには、各音を別々の指で押さえる方が良いのです。今回採用した指使いは、コードプレイがメインのTuck Andressが使っているものです。手首の角度を変化させて、異弦同フレットに対応しています。Patが実際この指使いで弾いているのかは確認できていませんが、非常に良い演奏方法の例としてこのTuck式指使いも使えるようになりましょう。

<参考音源>
音源はPat Metheny Groupのアルバム「Offramp」に収録されています。まだ聴いたことがない人はぜひチェックしてください!