2012年2月1日水曜日

Pat Metheny Tour in Japan 2012 ライブリポート:その2

『An Evening with Pat Metheny with Larry Grenadier』ライブリポート、その2です!

M4. Always and Forever
名盤「Secret Story」からのスローナンバー。メロディが始まった瞬間に客席から拍手が起こります。パットはガットギターに持ち替えて、ラリーのどっしりとしたサポートの上に乗るようにフィンガーピッキングでメロディを紡いでいきます。ゆったりと音楽の中に漂うような演奏。しかしその雰囲気そのものをパットとラリー自身が作り出しています。
パットはカッタウェイ付きのガットギターを弾いていますが、そのサウンドはまたしても生音のリアルさが有りつつ柔らかい。パットが好むガットギターサウンドはクラシックギター特有の高音域のピーキーなアタック感がほとんどなく、中音域を前面に出した太く温かい音色です。弾いたときに「トゥン」と音が前に出てくる感じ。時々聞こえてくるナイロン弦がひしゃげる音や巻き弦のメタリックな音がナチュラル感を出しています。


このようなサウンドがだいたいCDで聞ける音なのですが、実はライブだとちょっと違います。低音域のさらに下の音域、つまりギターの実音より下の「ボフ」というか「ドゥン」という音がかなり聞こえています。ライブハウスなどのスピーカーで言うところの "サブウーハー" 的サウンド。どんなギターも実はこういうドレミ的な音ではない音が出ていて、CD作品などでは聞きやすくするためにイコライザーである程度削るものなのですが、パットのライブの場合はけっこう出ている。これは予想なのですが、ソロギターを弾く場合などにギター1本だけでサウンドを保たせるためにわざとこの音域を残しているんじゃないかと思っています。音色を整った奇麗な方向に持っていくと確かに聞きやすくはなりますが、迫力や存在感が薄くなってしまう。それを回避するためのサウンドメイクなのではないでしょうか。たぶんこれは楽器構成によって異なる音作りをしている可能性もあるので、いろいろなシチュエーション毎に検証してみる必要があると思っています。ということでまた次回のライブへ足を運ぶのが楽しみになってきました!

M5. The Good Life
アルトサックス奏者のOrnette Coleman(オーネット・コールマン)による作曲で、パットの演奏はオーネットとの伝説的共作「Song X」のTwentieth Anniversary盤で聴くことができます。パットは時々ライブでこの曲を演奏するようで、オーネットへのリスペクトに基づくパットの愛奏曲と言えるのではないでしょうか。メジャー系の明るい曲なのですが、ただ明るいのではなく妙に明るい雰囲気があります。ラテン系のリズムに乗ったメロディの中にちょっとした "おかしみ" があるように感じる曲です。
パットはフルアコに持ち替え、モーダルインターチェンジが続くコード進行を渡り歩いていきます。軽快なテンポの中でラリーとの絶妙なアンサンブルが際立っています。

M6. Question and Answer
一転して雰囲気が変わり、パットがイントロを弾き始めます。1弦の3フレットからプリングオフをして開放弦の音を出す奏法。パット作曲による3拍子のジャズチューンは途中のリズムのキメが印象的なマイナー調の曲です。パットは前曲に引き続きフルアコ。強くてしっかりしたピッキングが一音一音の存在感を作り出しています。どんなに速いフレーズでもしっかり弾き切るところに、パットの説得力あるサウンドの秘密があるのだと思います。
テーマからギターソロ、ベースソロへの流れはオーソドックスなジャズスタイル。しかし曲の最後になってそれまで暗めだった全体のリバーブ音が明るめのものに変化し、より幻想的な空間を感じられるものに。ギターのエフェクターなどを使うのではなく空間の演出でサウンドの変化を付けているところに、パットとサウンドクルーのチームワークを見た気がしました。

続く。。。