2012年3月21日水曜日

PatMethenyLabo:Target Note Approachの演奏例

ここではtarget note approachを使って演奏されたフレーズの実例を挙げてみたいと思います。第9回モントリオール国際ジャズフェスティバルにてSteve Swallow(ベース)、Bob Moses(ドラムス)とのトリオで演奏した映像をご覧ください。曲はブラジルの伝説的シンガーソングライター、Milton Nascimento作曲の「Vera Cruz」。アドリブの最初(1分35秒)で弾かれているフレーズです。











ではフレーズ全体のアナライズをしてみましょう。TAB譜と一緒に以下の説明をご覧ください。

・曲のキーはGmです。
・1音目から6音目まではG aeolianモードの音を順番に2度、b3度、2度、ルート、b7度、b6度と弾いています。
・6音目から9音目まではクロマチックで下っています。
・9音目、11音目、13音目はそれぞれG aeolianの4度、b3度、2度の音で、10音目、12音目はつなぎの役割をしている音です。
・このフレーズのtarget noteは13音目です。

次にtarget note approachについて考察してみましょう。target note approachの特徴はクロマチックの音使いです。このフレーズの中では6音目から9音目がそれに当たります。この中でノンスケールノートは8音目だけなのですが、4つの音全体でクロマチックスケールの流れを作っているので、この部分は調性感が無く聴こえます。たった一つの音を加えるだけで調性感を無くすことができるということが分かります。

また10音目、12音目はスケールノートに挟まれているノンダイアトニックノートで、9音目、11音目、13音目のスケールノートのスムーズな流れを作っています。10音目と12音目はhub-noteと同じフィンガリングだが、役割は異なります。これらの音を抜かすと単純にスケールが下っていくフレーズになってしまうが、入っているおかげで音数が多くなり複雑に聞こえるようになっています。スケールをただ弾くのではなく、このような工夫を入れると面白いフレーズになるというとても良い例です。

Patはこの短いフレーズの中で明らかに調性感のある音と無い音をコントロールしているのが分かります。5音まではG aeolianモードの雰囲気があり、6音目からのクロマチックの流れで一度無調性になり、11音目から調性感が少しずつ復活し、15音目のルート(G)で完全にG aeolianの雰囲気に戻ります。つまりtarget noteである13音目までの中で、調性感のある音は7つ、調性感の無い音は6つとなります。

Patのtarget note approachは確かにクロマチックノートが印象的で、調性感の全く無いフレージングがとてもエキサイティングな場合もあります。しかし今回のフレーズのようにスケールノートとクロマチックノートを組み合わせて使うことで両者の対比がつき、調性感と無調性感が交互に見え隠れする素晴らしいフレーズを作ることができるということが分かりました。このアイディアをぜひ自分のフレージングの中に取り入れてみてください!