2012年1月8日日曜日

ギター試奏レポート・Gibson ES-335

世界に名だたる2大ギターメーカー「Gibson(ギブソン)」と「Fender(フェンダー)」の名前はみなさん良くご存知だと思います。そのGibson社から発売されて以来、世界中のギタリストに愛されてきたギターがこの「Gibson ES-335(ギブソン・イーエス・スリーサーティーファイブ)」です。日本では「サンサンゴ」という愛称で広く親しまれていますがどんなジャンルの音楽にも対応できる柔軟性と素晴らしいサウンドの虜になっているギタリストは数えきれないでしょう。今回はその「335」を試奏して感じたことを楽器を選ぶときの大切なポイントの説明を交えながらリポートします!

「335」ってどんなギター?
世間で一般的に使われている呼び方で言うと335はセミアコースティック、略して「セミアコ」という種類のギターです。これは "アコースティックな部分をいくらか持っているギター" というニュアンスの言葉でこの楽器の構造上の特徴からそう呼ばれています。簡単に説明しますといわゆるエレキギター(例えばフェンダーのストラトキャスター)は "ソリッドボディー" と言って空洞が無いボディをしています。反対にジャズギター(ギブソンのL-5など)はフォークギターに近い大きな箱のような空洞を持つボディでフルアコースティック、略して "フルアコ" といいます。このソリッドボディとフルアコのちょうと中間のようなボディを持っているので「セミアコ」と呼ばれているという訳です。


では実際に335を見てみましょう。正面から見ると面積がかなり大きくまるでジャズギターを見ているみたいなのですが、横から見ると実はエレキと同じくらいの薄さです。そしてボディ内部には大きな空洞があります。しかし内部の全てが空洞になっているのではなく、ネック~ピックアップ~テイルピースを結んだ縦のラインには "センターブロック" と呼ばれる木材が入っています。つまり空洞になっている部分はボディの両サイドだけということですね。ボディの中心部はエレキ、両サイドはジャズギターという構造が実はサウンドにも大きく影響しています。ちょっと専門的な説明になりますが、弦振動を電気的に拾うピックアップ(=マイク)がボディの中心部(エレキの部分)に付いているので、エレキのようなサスティーンの長い音を生み出します。それと同時に同じ弦振動が両サイドのボディを共振させてジャズギターのような太くて温かい音色を生み出します。つまり2種類のギターのオイシイところを一人占めしたギターということですね。この点が335が様々なジャンルの音楽で使われているという理由だと僕は思います。

では次に楽器を手に取って音を出してみたいのですが、その前にちょっと一休みをして余談にお付き合いください。みなさんも新しい楽器の購入を考える時や興味のある新製品が発売された時などに楽器店に足を運ぶことがあると思います。そんなときに注意していただきたいポイントをいくつか挙げてみますのでぜひ参考にしてみてください!

『楽器店にギターをチェックしに行くときの心得』
・どんな種類のギターが良いのかをはっきりさせておく
→楽器店には誘惑がとても多いので(苦笑)エレキを買いに行ったのになぜかアコギを買ってしまった、なんていうことも有り得ます。今の自分に必要な楽器はどの種類なのかということを大まかでも良いので決めておいてから出かけるとスムーズに希望のギターに辿り着けるでしょう。
・自分がいつも演奏している環境をできるだけ作って試奏する
→究極を言えば楽器店の中に自分のアンプやエフェクターなどを全てセッティングして、さあ何でも来い!という風にできれば良いのですが普通なかなかそうはいきません。ですので自分でできる範囲でいつもの自分の環境を作りましょう。

1 : ギターを正しく持てる環境を作る
いつも椅子に座って演奏する人は椅子を借りて弾く。いつも立って演奏する人はストラップを持参してベストポジションでギターを弾く。正しくギターを構えて試奏することでそのギターで良いのか、長く付き合っていけるかどうかのイメージを掴めるでしょう。

2 : ピックやカポなど演奏自体に必要なものを持参する
例えばピック弾きの人の場合、ピックの種類によって出てくるサウンドが全然違ってきます。いつも使っているピックを使って演奏のフィーリングを確かめましょう。

その他みなさんそれぞれこだわりのポイントがあると思いますので、それを大切にしつつ新しい楽器を探してみてください。初心者の人はギターに詳しい人に一緒に付いて行ってもらうと心強いと思いますよ!

「335」を弾いてみよう!
ではいよいよ335を弾いてみましょう!まず抱えてみた感じですが、ボディーが大きいにも関わらず意外と体にしっくりとフィットします。薄ボディの本領発揮というところでしょう。右手も自然と演奏しやすいポジションに置けて扱いやすいギターだという印象を強く受けます。フィンガーボードはやや細めですがネック自体はしっかりとしているので全く問題ありません。高いフレットの部分まで弾きやすくできていて、メロディ弾き、ソロ弾き、或いはコードカッティングなどいろいろな奏法に適していると思います。サウンド面で言うと温かく柔らかい音色も作れるしシャープな音色も良い、まさに万能選手だと思います!このギター1本あればどこに行っても大丈夫。大袈裟じゃなくてそう思いますよ。

今度は違う色の335を弾いてみます。ネックの作りは1本1本違うので好みの形状のネックを持っているギターを探すことは重要なことですね。それからギター本体のセッティングによっても弾き心地がかなり変わってきます。楽器店に置いてある状態イコール自分にとってのベストな状態とは言えない場合もあるので、自分のベストセッティングを模索することも必要になるかもしれません。どんなセッティングが自分に合っているのかを知るために経験者の人や楽器店の人に相談するのも良い方法でしょう。あと補足ですが、335と同じセミアコなのですがボディが一回り小さめのギターも出ています。335の音は大好きなんだけどちょっと大き過ぎて上手く弾けない...という方は「ボディが小さめのセミアコはありますか?」と楽器店できいてみてください。


最後に335のサウンドに大きく影響しているパーツの説明を簡単にしたいと思います。左の2枚の写真を比べてみてください。弦の付け根部分のパーツがそれぞれ違いますよね。弦を留めておくパーツをテイルピースと呼びますが、上のものはストップテイルピース、下のものはブランコテイルピースといいます。ストップテイルピースは弦の力(テンション)がかかりやすいので、よりサスティーンの長い、ちょっと硬めの音になります。
一方ブランコテイルピースの方は逆に弦のテンションが若干弱くなるので柔らかくて優しい音になります。このサウンドの違いでどちらのモデルを選ぶかを決める人も多いようですね。ちなみに僕の好みはストップテイルピースの方です。よりエレキに近いサウンドが出るので、エレキ的奏法を使ってギターを歌わせるのに向いているからです。でもジャズっぽい音色を出したいときにはブランコがやっぱり良いなー(笑)。みなさんもぜひ両方のモデルを試してみてください!

まとめ~335はやっぱり素晴らしい!
僕自身がアコースフィアの中で演奏しているようなスタイル、つまりメロディやアドリブを常に弾いたり時々軽いバッキングパートを弾いたりするような場合には、この335はもってこいのギターだと思います。ただ誰にでもあてはまるポイントではないので、やはり自分に合うギターはどれなのか?ということを一番に考えてギターを探すことが大切だと思います。みなさんが自分のベストパートナーと巡り会えることを祈っています!