2012年1月24日火曜日

PatMethenyLabo:Orchestrionツアー2010 in Tokyo ライブレポート!

2010年にPatが東京で行った「Orchestrion」ツアーのライブレポートを再び掲載します!2012年の来日ツアーがすでに始まっていますが、前回来日時の2010年ツアーもすごかったです!当時の雰囲気が少しでも伝わればいいなと思っています。ぜひご覧ください!。。。。。




<「Orchestrion」ツアー2010 in Tokyo!>
Patが長年の夢を実現した一大プロジェクト「Orchestrion」。ワールドツアーの最後に行われた日本公演は大阪、名古屋、東京で合計四日間開催され、幸運にも東京での二日間に足を運ぶことができました。今回Orchestrionプロジェクトを創り上げたPatの偉大さを改めて強く感じると共に、ミュージシャンとして様々な疑問が湧き上がってきました。ライブレポート、そしてそれらの疑問への考察など思うままに記してみたいと思います!

<Orchestrionとは?>
まずOrchestrionとは何なのかについて、既にPatのインタビューなどで語られていることを簡単に記しておきます。Patが子供の頃に触れていた自動演奏ピアノ(Player Piano)をモデルにして、現代版として全く新しいテクノロジーを使って甦らせた自動演奏マシーンです。自動で音楽を奏でてくれるものは現在でも生楽器の音をサンプリングして使うシーケンサーなど数多くありましたが、実際に生楽器を鳴らして同時演奏させるものはこのOrchestrionだけ!全ての楽器を完全にコントロールできるというシステムのすごさもさることながら、自分の演奏に合わせてリアルタイムで操作できるというところが全く謎な部分であり、一番興味深い部分です。実際ライブを目にすることでOrchestrionの仕組みを少しでも解明できるのか、できないのか。今回の個人的なテーマでもありました。いくつかのポイントは後ほど別項で考察してみたいと思います。最初にここでは当日のライブの模様をレポートしつつ、PatがOrchestrionに込めた思いを探っていきたいと思います。

<ライブの流れと曲順>
ライブは大きく分けて前半のソロギター演奏と、後半のOrchestrionという流れになっていました。使ったギターの情報も合わせて時間軸に沿って表してみると次のようになります。

ガットギターによるメドレー演奏
・Phase Danceから始まるPatの代表曲メドレー。Pat独特のソロギタースタイルで、メロディを中心に流れるように綴っていきます。

バリトンギターによるソロギター演奏
・甘く響く高音弦のメロディ&コード、そしてベースのように響く低音弦。太く存在感のあるバリトンギターの音色を活かした演奏が印象的でした。
(2012.1.24追記:ほぼバリトンギターだけを使って制作されたアルバム「What's It All About」が昨年(2011年)に発表されたことを思うと、2010年のツアー中も練習を兼ねて必ずステージで弾いていたんじゃないかなと思う。どんな練習よりもステージ上で弾くことが一番身になるということだと思います。)

Picassoギターによる演奏
・Picassoギターは42本の弦、1本のレギュラーネックと4本の短いネックを持つ、Patのために作られたギターです。Patは製作段階から携わっていたそうですが、さすが自分のアイディアを詰め込んだギターだけあって完璧に使いこなしています。
最初から自分はこう使いたいという明確な考えがあったのでしょうね。普通のギターとは全く異なる弾き方にも関わらず、美しく曲を奏でるPat。楽器の枠にとらわれず常に新しいものを探求してきたPatの大きな足跡の一つだと思います。

Orchestrion組曲
・ここまで暗幕の後ろに隠されていたOrchestrionが姿を現します。 マリンバ、パーカッション、シンバル、スネアドラムなどの打楽器。ピアノ、エレキギター、スティール弦のアコースティックギター、エレキベース、そしてOrchestrionのために特別に作られた自動演奏ギター(?)などの撥弦楽器。きれいな音階にチューニングされたボトルのセット。これらの楽器群に合わせてPatが演奏していきます。全ての楽器には音を出していることを知らせる小さなライトが仕込まれていて、視覚的な演出もされています。アルバムの中から「Expansion」「Spirit Of The Air」「Entry Point」「Orchestrion」の順で演奏。PatのMCをはさみ、「Soul Search」を演奏してOrchestrion組曲が完遂されました。

Orchestrionとのimprovisation、そして終演へ
「今回どの場所に行っても必ず質問されることが2つあるんだ。一つは『Are you crazy?』(笑)。この質問には答えないようにしているよ(笑)。そしてもう一つは『Orchestrionは一体どうなっているんだ?』。一言でいうのは難しいし言っても誰も理解できないと思うから、ほんの少しだけギターを弾きながら説明してみるね。」
・このようなMCから始まったPatのOrchestrionインストラクション。ステージ上の各種楽器の他に、Patの足元にセットされてあるいろいろなペダル。このペダル群がOrchestrionをコントロールする要となっているようです。一番大きなペダルは、ハモンド系の電子オルガンに使われている、足で演奏するベース音用のもの。一番右側のキーを足でリズミカルに4回踏むと、ステージ中央に設置されている小さなシンバルがリズムを刻みだします。メトロノームにある、いわゆるタップ機能のようです。同じペダルを使い、今度はギターの音を重ねていきます。幻想的なバッキングトラックが創出され、Patがその上で縦横無尽にアドリブを奏でます。他の打楽器たちもいつの間にか合流し、全てをコントロールしながら演奏を進めるPat。システム全体を完全に把握し使いこなせなければこのような演奏は全く不可能です。やはりここでもPatがOrchestrionをゼロから作り上げた重みと凄みを感じます。この後インストラクションを兼ねたimprovisationが何曲か続き、昔のアルバムからの曲をOrchestrionと共に演奏し、本編が終了。もちろん熱狂的なアンコールにも何回もこたえてくれて、3時間近いステージが終わりました。

<楽器構成の変化とその理由>
1日目、2日目ともにライブの流れは基本的にほぼ同じでした。Orchestrionツアーと銘打ちながら何故ライブの1曲目からOrchestrionを使わなかったのかが疑問でしたが、これには理由があるように思えます。これは僕の個人的な予想に過ぎませんが、音楽を奏でる上でPatが採用してきたいろいろな方法論があり、その中からギター1本でできることとしてガットギター、バリトンギター、Picassoギターを使ったソロ演奏があった。それぞれの楽器で音域や音色の違いを出し、バリエーションを作ると同時に、ギターという楽器の可能性を表現する。そして更に、ギターを操りながらそのギターにコネクトされている楽器群を操作するという、ギターの機能を拡張したものとしてのOrchestrionだったのではないかと思うのです。Player Guitarという名前を付けるほど全自動化されているわけではありませんが、ギターという楽器の新しい姿を見たように思います。

最後に、これだけ密度の濃い内容の演奏を長時間、たった一人でこなしてしまうPatの集中力は尋常ではありません。長年の演奏活動で培われたものでもあるでしょうが、自分がやらねばという使命感、責任感によるところが一番大きいのではと思います。そんなPatの偉大なエネルギーに圧倒されたライブパフォーマンスでした!